<後編>徹底した予防こそが、安心して日々を暮らす秘訣

 

前回に続き、大阪府大阪市の大阪がん循環器病予防センター所長 伊藤壽記(としのり)先生インタビューです。前回の記事はこちらからお読み下さい。

 

-前回のインタビューで、日本やアメリカはキューバに比べて医療費がとてつもなく大きいという話をしていただきました。その中でも「お薬代」が多いと聞いているのですが、どれだけ多くのお薬をみなさん飲まれているのでしょうか?

みなさんは多くの薬を病院からもらって飲んでおられます。日本の国民医療費全体の約2割が薬剤と言われているのを知っていますか?

お薬手帳を拝見すると、血圧や血糖を下げるお薬をもらっている方がよくいらっしゃいますね。悪い生活習慣を続けた結果、たとえば血圧や血糖が上がってしまい、血圧や血糖を下げるお薬を飲んだりしているわけです。

生活習慣を改めれば、本来その薬は飲まなくても済むはずですが、薬を飲んで「治った」と錯覚してしまう方が実に多い。

薬を飲んで血圧や血糖を下げているだけなので、根本的に高血圧や糖尿病が治っているわけではありません。

生活習慣を変えずに薬を飲みだしたら、一生飲まなければいけません。本来、薬はそういう使い方をするものではありません。

 

―薬を飲むだけで解決したつもりになるのではなく、生活習慣を改めて「薬の正しい使い方」や、「飲む意味」を私たちがわかっていることが大切ということでしょうか。

そうですね。病態を抑えるために使っているお薬も、使い続けていると慣れが生じ次第に効かなくなってきます。

すると、「次はこのお薬にしましょう」と、高い薬を勧められて、飲むわけです。「念のため飲んでおきましょうね」と言われて薬を出されることもあるかも知れません。

ですが、ここ近年は患者さんも「はたしてこの薬は飲んでいいのかな」と飲む前に一度考える方が増えてきました。飲み合わせを考えなければなりませんし、薬の副作用の心配もあります。

 

-患者さんも自分が飲む薬のことは自分で考えて選択するようになってきたということですね。生活習慣を変える必要があることはもちろんですが、体質改善のためにサプリメントを選ぶ方もここ最近では増えていると思います。飲むにあたって気をつけたほうが良いことを教えていただけますでしょうか。

サプリメントの多くは主に、自然界にあって食経験のある「天然素材」から抽出した成分が含まれているので、多くの場合安心して飲めます。どのような成分構成になっているかを、消費者ひとりひとりが自分の目で確認することが大切ですね。

副作用もまったくないわけではありませんが、私たちの祖先が何らかのかたちで身体の中に受けいれてきたものです。たとえば、AHCCⓇもキノコ由来の成分でできていますよね。

サプリメントも薬と同じように飲み合わせを考える必要があります。患者さんの中には、外来にサプリメントをいろいろ持ってきて、「あれもこれも飲んでいます」と申告する方がいらっしゃるのですが、何を第一目標にあげるかを伺い、サプリメントを1つか2つくらいに絞っていただいています。

飲み続けてみて、安全で効果的であるということが確認できれば、次の欲望が出てきて「じゃあこっちも」と増やしていきます。いきなり飲む種類を増やして、万が一何かが起こった時に原因がわからないようでは困るわけです。

患者さんには、「サプリメントは最小限から始めて、増やしてもせいぜい2、3種までにしましょう」とお話しています。

 

-薬もサプリメントも飲めば良いわけではなく、自分に必要なものなのか検証が必要だということですね。薬剤費が医療費の多くを占めているという話をしましたが、がんでしたら進行具合によって薬剤費も当然大きく違ってきますよね。

がんはステージが早い段階でみつけて処理をすると局所の治療で終わるのですが、ある一線を越えると全身病になってしまいます。

胃がんも、昔は胃の3分の2を切除するのが標準の治療でした。今では範囲が限られた早期胃がんでは、普通の胃カメラで病変の粘膜だけこそいでいく方法があり、初期に見つけて早く治療すれば、外科手術をすることなく克服できる可能性が高くなりました。

乳がんも2cmになるまでの間に見つければ広がりにくい傾向にはあるのですが、2cm以上になると骨など他の臓器に転移したりと、全身病になってしまいます。

がんの手術は局所療法です。がんの進行が一定の線を越えてしまうと全身療法としての抗がん剤を投与しなければいけません。

そうすると、局所療法よりお金も治療期間もかかり、なかなか克服できないということにもつながっていきます。

 

-もし、がんにかかっていたとしても、いかに初期の段階で見つけられるかどうかで身体への負担や金銭的負担も変わってくるのですね。初期の段階で見つける方法として、やはり定期検診を受けるのが一番でしょうか?

検診も「ただ受ければ良い」というものでもありません。精度管理がしっかりしている、学会で認定されているような検診センターで受けることが大切です。

勤め人の方であれば、職場が主催する健康診断の他、特定の病気に対する「検診」もやってくれるケースがあります。しかし、実はそれだけでは安心できません。

行政や企業は、ある一定の予算の中で検診の費用を捻出しています。定期検診の相見積もりを取ってからどこの検診センターに依頼するかを決めているのですが、「検査項目」を指定して、より安い方を選ぶ傾向にあります。

経費から出すので安い方がいいのかもしれませんが、その検診の精度管理の高さはなかなか数字で表せるものではないと思います。ですから、単純に予算のみで比較するのは難しいわけです。そして、検査の精度が低いと病気を見逃す可能性もあるのです。

そういったリスクを避けるためにも、自分で予算をかけて検診を受ける選択をすることができるなら何よりだと思います。

ここ大阪がん循環器病予防センターでは、X 線写真などの検査画像は検診精度を高くして、発見率を上げるためにも、必ず二人で診るようにしています。

 

-病院によって精度が違うとは大変興味深いお話です。検診に行けばとりあえず安心ではないのですね。

毎年同じ機関で受けるからこそ、検診の意味があります。

今年はここで来年はここ、というのはあまりよくありません。なぜなら、検査データーにしろ、画像結果にしろ、時間の経過とともに変化を見ていくことが重要ですから。

これから検診を受けようと考えている方は、精緻な検査をしてくれるところを選んでいただきたいですね。前回検診を受けた病院より精度の良い病院で受けて、前回見つけられなかった腫瘍をみつけたというケースもあります。

聞いた話ですが、ある方が一年に二回検診に行って二回目にがんが見つかったそうです。検診と検診の間にがんが急速に進行した可能性もありますが、ひょっとしたら一回目の検診で見逃されている可能性もゼロではありません。

そのようなことを防ぐためにも、せっかくお金を払って受けに行くのですから、少々高くとも精度管理の高い医療機関で検診を受けていただければと思います。

 

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伊藤先生、大変興味深いお話をありがとうございました。私たちは、健康なときも、そうではないときも、いつでもその先を選ぶ力と、そのための“見る目”を養っていく必要がある。そのように強く感じた取材となりました。

AHCCⓇ倶楽部では、次週以降も、専門家の先生、愛用者の方の「生の声」をお届けして参ります!

 

伊藤 壽記(いとう としのり)

大阪がん循環器病予防センター 所長

「大阪がん循環器病予防センターは、皆様の健康を守るために、精度の高い検診とがん・循環器病・生活習慣病の予防や啓蒙活動を展開しています。」

大阪がん循環器病予防センター
(大阪市城東区森之宮1丁目6番107号)
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