【インタビュー④】『みんなが専門性を生かして患者さんをよくすることに取り組めたら、医療はもっとよくなる』

前回に引き続き、大阪市の狹間研至先生インタビュー記事をお届けします。全4回の最終回となります。

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−お医者さんと、薬剤師さんだけでなく、あらゆる医療のインフラで力を合わせることは理にかなっているようですね。

そうですね。僕は元々、本当に外科や手術が好きですが、次第にこうしてチームで取り組めているということが面白いんです。もちろん、仕事ではスタンドプレイもありますけども、僕の原点でもある仕事に、薬局や薬剤師さんと一緒に関わっていけるということは、もっとたくさんの人をよくできる可能性もある。もちろん、自分自身が薬剤師さんの意見を頭に入れておかないと患者さんをよくできないかもしれないという恐怖感もあります。

 

「全部俺がやってんねん」って言いたいがために、「ほかの人のアドバイスは聞けへん」ってなったら、患者さんに失礼だと僕は思うんです。「その専門じゃないから知らん」と思ってもそのままにしちゃいけない。だから、みんなに「どう思う?」と質問します。

例えば、食事のメニューについては栄養士さんに聞きます。「なんで○○を入れているの?」と聞くと、「褥瘡(じょくそう)の治癒に良いと思ったからです」と。他にも、「BMIが19しかないので」とか、「体重が10キロぐらい減っているのでカロリーをこれくらい増やしたい、これだとたんぱく質が多いです」とかね。僕らはそれを言ってもらえると理解できますが、自分で1から組み立てるのは難しいから、やってくれるとありがたいんです。

僕、看護師さんにも言うんですよ、「僕は看護知らんから教えて」って。最近なんかは、理学療法士さんが理学療法士さんに転院の紹介状を書いてくるんです。先生のところに転院しますよ、引き続きリハビリよろしくお願いします、というものです。

専門用語も違うわからない分野のことも、どういう作業療法をしているか、理学療法をしているか、どういう評価で、よい、よくないを見極めていくのか・・・・・・そういうのが面白いんです。みんなが専門性をもとに、患者さんをよくすることに集約すると楽しいんじゃないかな。

−薬局を利用する方にお伝えしたいことはありますか。

患者さんに伝えたいことは、みなさんすぐに病院に行き過ぎということです。急性期など、行かなければならない時はあると思います。でも、「薬を飲んでも全然楽にならへんねんけど」とか、場合によっては発疹ができたとか。それをみなさん、全て医者のところへ質問しに行かれているはずです。

もちろん医者へ行っても良いのですが、その前に処方箋を持っていった薬局に、「もらった薬とこの症状は関係あるんやろか」と聞いてほしいです。よく言われるのは、「薬局って処方箋もってなくても入っていいんや」です。行って良いんですよ。そう思われるのは薬局側にも問題があります。

これを読んでいるみなさんには、是非薬局に話を聞きに行ってほしいですね。午前から昼までの時間は忙しい時間帯で、向こうもワタワタしていることがありますが、昼休み空け頃は対応してもらいやすいはずです。夕方の診察が始まる前は一息つく時間ですから、その時に「これ飲んで、すごい顔ほてる気がするんだけど、関係あるんかなあ」って伝えたら絶対に調べてくれますよ。

薬剤師さんはメーカーに電話したりもします。患者さんからの相談ならば、薬剤師さんもお医者さんに相談しやすくなって連携にもつながるし。あと、何か心配なことがあったら、直接薬局には行かずとも電話してもOKです。

病気になる前に薬局に行って、健康維持増進のためにプラスできることがあります。今ある健康が当たり前だと考えて、健康維持にお金払うのを嫌がる方が多いのですが、それは違うと思います。健康維持・増進・回復には本来、相当なお金がかかるものです。これからはおそらく、国の制度的にも「健康予防に気をつけておかないとダメですよ」という風になるはずです。

一方で、「お金がないから抗がん剤諦めます」という命に関わる状況は無くさないといけない。だから保険はそちらにシフトし、風邪薬などは慎重に考えるべき時代になるはずです。

フランスでは、風邪薬は全額自費負担だそうです。もっと重い病気の場合には、医師の診察で保険が効くんですよ。抗がん剤は全額公費負担です。制度変更は薬の売り上げに直結するからよく精査しなければなりませんが。

予防、健康増進のために薬局に相談してもらうことが理想です。「膝・腰が痛くて何とかしたいねん」とか、「うちはがんの家系で、がんを予防したいねん」とか、そういう時に、「じゃあこんなんあるけど一度試してみる?」と。薬局側も調剤だけやっていたら、人材も含めて社会の資産が活用しきれず、とてももったいないのです。薬局がこれからも「地域の中」にあること、そして医療のプロバイダであることが大切です。なった病気だけじゃなくて、病気の予防も含めてね。今すでにいる薬剤師の力を最大限活用しようと、僕も自分で面白がりながらやっているところです。

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狹間先生、たくさんの貴重なお話をありがとうございました。

健康との向き合い方や病院、薬局との向き合い方、活用の仕方を考えさせられるインタビューでした。お医者様だけに頼るのではなく、薬局や薬剤師さんにも相談して良いのだと知りました。色々な立場の方の意見をもとに総合的なアドバイスをいただければ、私たちの不安も解消され、安心して予防や治療に取り組めそうですね。

 

本記事に関してより詳しくお聞きになりたい方は、ぜひ狹間先生の薬局へ連絡してみてください!

 

狹間研至(はざま けんじ)先生
ファルメディコ株式会社 代表取締役社長
一般社団法人 日本在宅薬学会 理事長
医療法人嘉健会 思温病院 理事長
熊本大学薬学部・熊本大学大学院薬学教育部 臨床教授
京都薬科大学 客員教授
医師、医学博士
大阪大学大学院医学系研究科 統合医療学寄附講座 特任准教授

 

ホームページ:
ファルメディコ株式会社 http://www.pharmedico.com/
ハザマ薬局 http://hazama-web.co.jp/

 

ハザマ薬局:
大阪市北区天神橋1−9−5 山西屋・西孫ビル3F
TEL:06−4801−9555

 

【略歴】
昭和44年 大阪生まれ
平成7年大阪大学医学部卒業後、大阪大学医学部付属病院、大阪府立病院(現 大阪府立急性期・総合医療センター)、宝塚市立病院で外科・呼吸器外科診療に従事。
平成12年大阪大学大学院医学系研究科臓器制御外科にて異種移植をテーマとした研究および臨床業務に携わる。
平成16年同修了後、現職。医師、医学博士、一般社団法人 日本外科学会 認定登録医。
現在は、地域医療の現場で医師として診療も行うとともに、
一般社団法人 薬剤師あゆみの会・一般社団法人 日本在宅薬学会の理事長として薬剤師生涯教育に、長崎大学薬学部、近畿大学薬学部、兵庫医療大学薬学部・愛知学院大学薬学部、名城大学薬学部などで薬学教育にも携わっている。
著書:薬局マネジメント3.0(評言社)ほか多数