【インタビュー③】『みんなが専門性を生かして患者さんをよくすることに取り組めたら、医療はもっとよくなる』

前回に引き続き、外科医、薬剤師、薬局経営、在宅薬学会の理事など多面的にご活躍の、大阪市の狹間研至先生インタビュー記事をお届けします。全4回のうち、今回は第3回です。

第1回は こちら
第2回は こちら

−先生のブログ記事に「病院でも思うような連携ができるようになってきました」と書かれていました。先生がお考えになる、理想的な「病院での連携のあり方」を教えてください。

例えば、「患者さんが食事を食べない」という事実があったとします。看護師さんが「先生、○○さん食事を食べないんですよ」と報告してくれたとして、僕らは食べない病気をいっぱい知っていますから、どの病気かを考えるんです。でもそこで断定せずに、周りに聞くことにしています。「食べない理由ってなんだと思う?」と。

すると薬剤師さんは、「この(薬の)せいですかね」と言うわけです。こちらからすると「そんなことで食べなくなるの?」と思うようなことで。

 

もともと目的があって薬を出していますから、目的に対してどれほどの効き目があるか、さらに、「効き目が出ていて、副作用が出ていないところ」に薬をもっていかないとならないんです。それを適切にするために薬剤師さんに聞きます。

一方で、実は食事の味付けが気に入らないから食べてないってことあるからね。かたや、管理栄養士さんに聞いたら「いつもおかゆは食べていません」ってケースもあるし、理学療法士さんは「手が動きにくいからじゃないか」と言ってくれたかと思えば、看護師さんは「さっき息子さん来てえらい怒りはったんですよ、それでシュンとして食べていないかも。」と。

いろんな可能性がありつつも、真実は一つです。高齢化が進んだときにおいては、そういった多職種のチーム医療をやらなくちゃいけないというのは、僕自身一番仕事の中で力を込めていることです。

−チーム医療は、本当の意味で患者さんのサポートにつながりそうですね。

そうなると思います。超マクロで言えば、医療ニーズは急増しているのに医師と看護師は急増していないので、このままでは絶対に支えきれません。もちろんIT化などで効率化をはかりますが、それだけでは足りない。かといって、新職種を作るには時間が足りません。超高齢化社会になるにしたがって医療ニーズは急増しますが、その後人口減少でいきなりニーズが下がりますから、あんまりドラスティックなことはできませんので。

医師、看護師が足りなくなったとき、コンビニよりも多いといわれる、全国に5万8000件ある薬局のパワーを使わないと。統合医療に取り組む際もそうですが、薬局や薬剤師さんは社会的資源ともいえる「医療インフラ」です。ここを十二分に活用しきれていないというのが僕の考えです。

僕はもともと外科医なので特に思いましたが、外科をやっていると外科がすべてと思ったりします。でも、患者さんにとっては、手術で「がん」が取れることはスタートで、再発せず乗り切れるかどうかが重要です。患者さんが高齢になり、飲む薬が次第に増えて、慢性疾患も積み重なってくると、お薬を出した後の副作用を僕ら医師は多分見抜けずにいる。それを、薬剤師さんが見る仕組みにすると、極めてリーズナブルですし、今までと違うオペレーションになっても、彼らなら適切にクリアできるはずなんです。

−そうお考えになるのは、狹間先生が薬局の経営と医者の両方の立場にいらっしゃるからでしょうか。

それもあるかもしれません。たとえば開業医の友人たちも、「薬局の経営は向こうでやってはるから、あんまり変なことも言われへん」と思ってお互いに遠慮しているところもあるわけです。

「医」と「薬」は、当人達には離れているように見えていても、そこを一緒にやってみると、なんだか垣根をつぶしているようで面白くて。

「アリの一穴」だと思っているので、一本でも道をつないでおけばいろんな人が出入りし始めるので、知らんうちにわーと広がってね、垣根がなくなればいいなと思うんですよ。

薬剤師が連携意識を持って、患者さんの様子を追いかけて、次の一手を自分で考えはじめると、たぶんセルフメディケーションのやり方は全く変わります。機能性食品もセルフメディケーションの一環ですからね。社会的医療資源、メディケーションをうまく使っていくと、もっと医療はいい形になるのではないか、と。

患者さんの夢とか希望をなんとか叶えてあげたいと思います。

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狹間先生のインタビューは次回が最終回です。お楽しみに!

 

狹間研至(はざま けんじ)先生
ファルメディコ株式会社 代表取締役社長
一般社団法人 日本在宅薬学会 理事長
医療法人嘉健会 思温病院 理事長
熊本大学薬学部・熊本大学大学院薬学教育部 臨床教授
京都薬科大学 客員教授
医師、医学博士
大阪大学大学院医学系研究科 統合医療学寄附講座 特任准教授

 

ホームページ:
ファルメディコ株式会社 http://www.pharmedico.com/
ハザマ薬局 http://hazama-web.co.jp/

 

ハザマ薬局:
大阪市北区天神橋1−9−5 山西屋・西孫ビル3F
TEL:06−4801−9555

 

【略歴】
昭和44年 大阪生まれ
平成7年大阪大学医学部卒業後、大阪大学医学部付属病院、大阪府立病院(現 大阪府立急性期・総合医療センター)、宝塚市立病院で外科・呼吸器外科診療に従事。
平成12年大阪大学大学院医学系研究科臓器制御外科にて異種移植をテーマとした研究および臨床業務に携わる。
平成16年同修了後、現職。医師、医学博士、一般社団法人 日本外科学会 認定登録医。
現在は、地域医療の現場で医師として診療も行うとともに、
一般社団法人 薬剤師あゆみの会・一般社団法人 日本在宅薬学会の理事長として薬剤師生涯教育に、長崎大学薬学部、近畿大学薬学部、兵庫医療大学薬学部・愛知学院大学薬学部、名城大学薬学部などで薬学教育にも携わっている。

著書:薬局マネジメント3.0(評言社)ほか多数