<前編>誰にでも与えられた定命(定められた命)を明るく笑って楽しんで生きる

今回は、大阪府大阪市の「三好産婦人科」院長の三好得司先生にお話を伺いました。

三好先生は、白血病にかかったご経験をお持ちです。今は症状は落ち着いており、同院にお越しになる患者様と向き合いつつ、趣味のスキューバダイビングを休暇の楽しみにしていらっしゃいます。

患者様に寄り添う三好先生の、ご自身の体験に基づく、「今だから伝えたいこと」を2週に渡ってお届けします。

−三好先生、本日はよろしくお願いいたします。患者さんとのお話はもちろんのこと、ご自分の健康管理についてもお話をお伺いできれば幸いです。三好先生は現在、白血病にかかられていると伺いました。発病はいつ頃のことでしょうか?

「今から4年前のことですね。当時、血液検査を受けたら異常な数値が出ていて、精密検査の結果、白血病でした。自分自身はこうしていつも明るくて、のんきな性格だと思っていますが、(血液の)ガンだと言われると、こんな性格でもさすがに1週間ほど落ち込みましたね。」

 

−そうだったのですね。産婦人科医というお仕事をされている中で、ご自身に白血病が見つかるとは、大変ショックなことであったとお察し致します。ご病気がみつかる前に、体調の異変は感じられていたのでしょうか?

「普段は見ての通り元気印なのですが、見つかる前頃は朝からだるいし、なんだか疲れっぽくなっていました。

”やっぱ、年かな”とも思っていましたが、なんかおかしいなと思って、まず当院で血液検査したら、数値が異常になっていました。
炎症反応が無いにも関わらず、白血球だけが1回目の検査で20000、2回目で15000という数字が出ていて、これは絶対におかしいと。

詳しく調べてもらったところ、白血病だとわかりました。さすがに普段はあっけらかんとしている私でも、病気が発覚した時に考えたことは、患者様、スタッフ、家族はどうなるのだろうということでした。

“生前整理”の言葉が頭をよぎりましたね。

どうなるかわからないと思って、自分の身の回りの整理を始めましたが、根がのんき者でしたし、1週間ちょっと経ったら、気持ちが落ち着いて整理も気がついたら中止していました。

白血病は、急性ではなく慢性でした。これまでは、慢性が急性になるまで経過をみてから、急性になったら化学療法を受ける治療法が主流でした。

しかし、2002年頃から新しい抗癌剤(分子標的薬)が出始めたのです。

新薬の力も借りながら、治療に取り組んだところ、治療開始から4ヶ月目くらいから血液検査の結果は正常値に戻り、その後異常な値は出なくなり現在に至っております。」

 

−ご病気が見つかる以前の生活を、振り返ったりされましたか?

「がんというものは10年くらいかかって表面に出てくるとも言われています。今思えば病気の発症前には、“忙しいな、しんどいな”という時に、趣味のダイビングもやっていましたし、やっぱり身体にムリがかかっていたのでしょうね。

でも、趣味は趣味でかなり真剣に取り組んでいたのですよ。回復した今も続けています。
スキューバダイビングは、資格を取ろうと思って本格的にやっていました。やるからには遊び半分にできないので、毎週週末に白浜のビーチに行って訓練していました。

50歳からダイビングを始めて、もう20年です。2年かけてインストラクターの資格も取って、今も年4回は海外へ行っています。パラオ、フィリピン南西部のパラワン島にもいきましたし、セブ島にも10年以上通っています。その他ダイビングのできる国々にでかけていきました。」

 

−お仕事が多忙な中でも、趣味の時間を大切にされてきたのですね。その中でお身体を壊されるという体験はご自身のこれからを見直すきっかけにもなられたのではないでしょうか。

「(いつも)こんなに元気だから、私が病気になる前は「私と話したことで、私の元気をもらって帰ってもらおう!」と考えて患者さんと接していたのですが、自分が病気になったことで患者さんと話しやすくなりました。同じ目線になれますから。」

 

−病気だと知らされる瞬間の当事者の気持ちなど、実際に体験してみなければわからないことだと思います。
三好先生は普段、患者さんにどのように情報を伝えていらっしゃいますか?

「私はガンに対して明白な告知はしません。人は、自分がガンだと信じたくないものなので、告知のショックは計り知れないものです。聞くと気持ちがふさぎ込み、たいていの場合、更に免疫が下がってしまうのです。

例えば健康に対して不安になって、ドックへ行ったとします。データを見た医者から告知を受けて、また免疫が下がります。“今度は大きな病院で精査を受けて”と言われて、別の病院に行き、そこで「あなたはガンです」と言われて、また免疫が下がる・・・悪い方へ進む一方です。

治療が始まって、手術で免疫が下がり、化学療法でまた免疫が下がる・・・もちろん、人の命はひとつとして同じではないので、個人差はあるものです。もともと誰もが身体に持っている「免疫力」が病気と闘う原動力になりますが、それがなくなったら状況は悪くなりかねません。」

 

−なるほど、気持ちの面から免疫が下がり、悪循環になってしまうのですね。“病は気から”は本当のことなのだと思い知らされます。免疫を高めるために「よく笑う」「よく食べる」「よく眠る」ことが大切ですね。

「そうですね。例えば、昔はよくこんな光景がありました。教授回診の時に、主治医から一通り説明を聞いた教授がニコっと笑って、“おばあちゃん、(末期ガンの状態)今日はどうやね?”ってお腹に触診します。そうしたら、おばあちゃん“調子いいですわ”って答えるのです。

それまで腹痛を訴えていた方が、気持ちの面も明るくなってくる。長く元気でいられる。これだけ変わるのだから、スキンシップも治療の1つのようなものだなと。

今の時代はもう少し状況が変わっているかもしれないね。スキンシップもそうだけど、患者さんと触れる時間も、関わり方も当時とは変わってきているよね。

もちろん、患者さんと直接のやりとりを重視している先生もいるけども、さっきのようなコミュニケーションが薄れつつある今の時代なら、“良くなるものも良くならない”ということがあると思いますね。
その部分がうまくいけば、より良い方向に行くのではないかと思います。」

 

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三好先生のお話は後編に続きます!

後編では産婦人科医として感じてきたこと、そして現場から気づいた今だから伝えたいことをお届けいたします。
次回もお楽しみに。

 

三好 得司先生
三好産婦人科 院長

「通いやすい」「家に在るようにほっとする」アットホームな医院であることを
大切にしている、三好産婦人科 院長。

三好産婦人科
大阪市天王寺区東高津町10-7
公式ホームページ
http://miyoshi-clinic.com/