愛用者インタビュー:良くないときもあれば良いときもあるから、頑張りすぎないで<前編>

今週から2週にわたり、大阪府大阪市の「三好産婦人科」に勤務される看護師の大津さんへのインタビュー記事をお届けいたします。大津さんは卵巣がんを経験されました。

ご自身の体感と、今だからこそ伝えたいメッセージを頂戴しました。

 

−大津さん、今日はよろしくお願いいたします。普段患者さんを支援する立場の大津さんご自身が、過去にがんを経験されたと伺いました。それは、いつぐらいのことですか?

「約7年前ですね。卵巣がんでした。検査でがんと発覚するまで、自覚症状は何もなかったんです。

三好産婦人科で働かせてもらうようになってから、2年位経った時に子どもができて、その2年後にふたたび妊娠しています。その頃までは子宮がん検診も定期的に受けていたんですよね。

出産後はしばらくの間、検診に行っていませんでした。たまたま下の子が小学1年生の時に少し自分の時間ができたので、久しぶりに検診に行かないと、と思い立って行ったら…内診の時点で卵巣が赤ちゃんの頭ほどの大きさになっていることがわかって・・・すでに、12×10センチくらいになっていたんです。

手術前のMRIの検査で、悪性の疑いがあるとのことでした。

本当に恥ずかしい話なのですが、最後に婦人科で検診を受けてからすでに6年が経過していました。なかなか先生にはそのことが言えませんでしたね…。

このような仕事をしている身で、検診に行かなければダメなのですが、どうしても自分のことは後回しになっていました。」

 

−大津さんのお仕事と直接関係のある臓器に異変が見つかって、驚かれたのではないでしょうか?

 「私は、看護師になって初期の頃から産婦人科勤務でした。産科のことを集中して勉強していましたし、自分自身ではがんの予兆、自覚症状などをわかっているつもりでいたんです。でも、全く何も問題なく過ごせていたので、気がつきませんでした。

腹痛も違和感も全然なかったんです。多少、産後にしんどかったなどはありましたが、それは産後で疲れがたまっていただけのことだと思っていましたし、病院に行こうと思うほどではありませんでした。

6年ぶりの検診で12×10センチに卵巣が大きくなっていても、産後太りもありましたし、外から見て気づくこともなかったんです…。

先生からは、「これだけ大きかったら手術して取らないと、置いておいて小さくなるもんじゃないよ。」と言われました。その時点では、次のお正月休みに、くらいに思っていたんです。」

 

—そのときは、手術も半年後くらいで良いのでは、と思われていたのですね。

「まだそのときは卵巣のう腫だと思っていました。術前検査を受けて、1週間後に結果を教えてもらうと、MRIの結果から悪性の疑いがあると言われて。「ええええ!?」びっくりしてその時にはぶわ〜って涙が出ちゃって。

先生も、悪性とわかった時点で「破裂したら大変なことになる。すぐ手術しましょう」と勧めてくださいました。たまたま手術のキャンセルが入って、運良く1週間後に手術を受けることができたんです。」

 

−悪性腫瘍が見つかっても、すぐに手術を受けられないこともあるのではないでしょうか?

「そうかも知れません。担当して下さったのは有名な先生で、手術は常に3ヶ月待ちでした。1日に手術3〜4件、朝からめいっぱいです。私はその日の3件目くらいのオペだったんですが、“入れていただけるならそれでお願いします”、ということでお願いしました。

悪性と言われた時点で、もう、何も考える暇がありません。以前勤めていた病院も含めていろいろな患者さんを見てきていますから・・・卵巣がんの方は助からないことも多い感覚がありました。卵巣がんはたいてい事前の自覚症状がなくて、みつかったときには手遅れという事も多かったので。

私の場合、あまり悪性の中でも種類のよくないものでした。子宮も卵巣も、お腹を開けてみてあきらかにダメだったら全部取ろうという話でした。

開けてみたら“見た感じは大丈夫”ということで左の卵巣だけ取りました。あとは腸にも癒着がひどかったようです。」

 

−腸への癒着ですか?

「以前から私は内膜症を持っていて、その時点で何かあったと思うんです。内膜症を起こしている人は卵巣がんになることがあると言われています。手術をしてくれた先生は、もともと内膜症に詳しい先生でした。

がんの告知を受けてから、「すぐにでも抗がん剤開始します」と言われて、「あ、やっぱり悪性だったんだ」と初めて自覚しました。こんな仕事をしていても、自分のことはパニック状態で全然覚えていません。その後、知り合いの婦長さんに電話したんです。

自分が入院しているとは言わずに、「ちょっと知り合いの人で、こんな感じになっていて、抗がん剤治療勧められているんだけど、●●さん(婦長さんの名前)だったら、どう思いますか?」って。

でもすぐに、「あんたやろ。」って言われました。「今、入院してるの?すぐ行くわー」と来てくれました。

当時、私の子どもは小学校一年生と三年生だったんです。「いまからそんなこと言ってどうするの。治療を勧められているなら、しないと!」って言われました。

その時、私がとっさに言ったのは「髪の毛全部抜けるし!」だったんです。この仕事をしていて、色々と知っているはずなのにまだそんなことを考えていて…髪が抜けることに抵抗もありましたし、産婦人科で長く働いていてさまざまな症例を見てきていますが、自分のことになるとやっぱり駄目でした。

がんだということを忘れて、「なかったことにしよう」ではありませんが、自分だけが黙っていればわからないことですから…人に相談できない人はたくさんいると思うので、勇気を出して相談できるホームドクターが近くにいるのが一番ですね。」

 

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大津看護師のお話は次回へ続きます。

次回は、がんにかかって思うこと、がん検診のことも伺いました。次回の更新をお待ちください。

 

 

大津チエ看護師

 

三好産婦人科・勤務 看護師

「通いやすい」「家のようにほっとする」アットホームな医院であることを

大切にしている、三好産婦人科に在籍する看護師として長年従事。

 

三好産婦人科

大阪市天王寺区東高津町10-7

公式ホームページ

http://miyoshi-clinic.com/