ウルトラマラソンは常識が通用しない。精神力こそ、大きな後押しに~前編~

「一回きり、と思ったのがもう20回以上ウルトラマラソンを完走しました。終わった後のビールがおいしくて。走るのはとても気持ちが良いです!」

さわやかな笑顔で話すのは、100㎞の超長距離を走る「ウルトラマラソンランナー」の藤澤舞さん。市民ランナー向けのランニング教室も主宰されています。今回の取材もランニング教室を終えた後でした。

藤澤さんと、そのコーチを務める札幌エクセルアスリートクラブ代表 石井憲さん、お二人にお話を伺いました。

 

藤澤さんは、1974年札幌生まれ。30代のときにマラソンを始めてから実力を伸ばし、サロマ湖100㎞マラソンでは2度優勝されました。

2016年同年末にスペインで開催された100㎞世界選手権では個人8位入賞、団体金メダルという結果に。

藤澤さんから感じる体力・気力・精神力は、応援する人を元気づけるだけでなく、「自分も走ってみよう」とチャレンジする人の背中を押し続けています。

競技中の「あきらめない」精神力、競技生活を「続ける」勇気。藤澤さん流の「走ること」との向き合い方、取り組み方をお聞きしました。2週に分けてお届けします。

 

―走り始めたきっかけは「ダイエット目的」とお聞きしました。

最初は、気軽に始めたんです、ダイエット目的でした。10㎏~12㎏落ちて、特に体脂肪率がかなり落ちましたね。

今は走ることはライフワークになっています。最初は、正直なところこんなに続くと思っていなかったんです。10年続いているので、私にとってランニングが合っていたのかなと思います。

 

―ウルトラマラソンを走ることになったきっかけは?

ただ単に興味があったんです。マラソンを始めた翌年にいきなり100km走りました。その良さを人から聞いたのも後押しになりました。たまたま、職場の上司が毎年サロマ湖のマラソンに参加していて、「こんな大会があって、遠足みたいで楽しいよ」って言われたんです。

 

「遠足みたいで楽しいんだったら、人生の中で1回くらいは走ってみてもいいかな」と思ってチャレンジしました。でも、やってみたら全然楽しくなかったんです。苦しすぎて。

フルマラソンよりもペースはゆっくりなので、喋りながらジョギングぐらいで行けるのですが、ある距離に来ると足が動かなくなって、止まりました。

そこからが地獄です。80㎞くらいまではなんとか行けましたが、その後は1キロ進むのに何時間もかかっているような感覚で…残りの20kmが100kmくらいに感じるほどでした。

 

みんなゴールしたら感動して泣いたりするんですが、私は怒りをおぼえていて、「もう、2度と走るか!」と思うぐらい辛かったんです(笑)

 

―最初は強烈な印象が残った大会だったのですね。ウルトラマラソンの競技人口は増えているのでしょうか。

サロマ湖100㎞マラソンは3500人の枠で、ネットで一斉に募集してから20分くらいでいっぱいになるほどです。市民ランナーとよばれる愛好者の方もどんどん増えていますね。

 

―コーチの石井さんにお聴きします。ウルトラマラソンの勝敗の決め手は何ですか?

決め手になるのは、「精神力」しかないかもしれません。42.195㎞のフルマラソンと100㎞のウルトラマラソンは、全く別の競技です。ウルトラマラソンはフルマラソンの常識が通用しません。距離が倍以上で、フルマラソン選手にとっても100㎞は未知の世界ですから実際走ってみないとわからないんです。

ウルトラマラソンは日本人には向いています。世界の大会に行っても日本人選手はほとんど上位にいます。おそらくその理由は、走法と精神力の違いです。持久力が長く続く走り方が、日本人は得意なんですよね。

 

―藤澤さんはいかがですか?

やっぱり精神力ですね。昨年、中国のゴビ砂漠100㎞の過酷な大会に出たのですが、砂に足が取られて前に進まないんです。100㎞の自己ベストは7時間42分48秒ですが、ゴビ砂漠では10時間47分かかりました。

全体の完走率は30%ほどで、他国の選手はほとんどリタイヤ。日本人選手だけほぼ完走していたんですよ。

 

―日本人の走法と、精神力の強みが生きる競技とは、今後の動向にも期待したいです。率先して記録を作られて、本当に素晴らしいですね。所属されている札幌エクセルアスリートクラブについても教えてください。

コーチ・石井さん 「藤澤さんがクラブに所属したのは昨年4月からです。アスリートクラブでは選手の育成や指導をしています。北海道の陸上長距離・中距離競技のレベルアップを図っていきたい。そんな思いで設立したチームです。ジュニアからトップチームまでの一貫指導体制を確立し、中長距離界で、国内・海外の国際レースで活躍する選手に育成していきます。」

 

藤澤さん 「私は競技を初めてからずっと一人で練習していました。知識がなかったので、ひたすらゆっくり走るだけしかやっていなかったんです。今思えば、効率の悪い練習をしていましたね。本格的なトレーニングを学んだのはごく最近のことです。最初は自己流でもタイムが伸びますが、ある程度のところで頭打ちになります。そうした時に石井さんにたまたま出会ったんです。」

 

コーチ・石井さん 「自己流で頑張っていた藤澤さんを、僕がまさに今、指導強化しているということなんです。指導内容は実走のペース配分から、体力づくり、トレーニング、食生活、サプリメントの活用までアドバイスしています。

藤澤さんの場合は、前回出場の大会時の振り返りから、サプリメントの取り方を変えたり、藤澤さんに適したスタイルに変えることで、無駄な力が入らずに走れるようになり良い状態になっています。きっとまだまだ記録が伸びると信じています。」

 

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インタビューは後半へ続きます。後半は、藤澤さん、石井さんの体力作り、食事やサプリメントについての話題をお届け予定です!どうぞお楽しみに。

 

藤澤 舞(ふじさわ まい)/北海道札幌市出身

100kmマラソンをメインとする日本を代表するウルトラランナー。2008~2015年 IAU100km世界選手権 7回連続出場2010,2011年 IAU100kmアジア選手権 優勝。また、2012,2014年はIAU100km世界選手権にて団体銀メダルを獲得。2013年 サロマ湖100kmウルトラマラソンでは、待望の総合優勝を果たす。2016年も同大会で優勝。数多くのレースに出場し、洞爺湖、千歳JAL国際、金沢マラソンで優勝を収めるなど実力派ランナーとして活躍中。

 

石井 憲(いしい けん)/北海道札幌市出身

1990年 福岡国体に3000MSCにて北海道代表として出場。 同年、全道高校2位にて、インターハイ出場。現在はジュニアトップチームのトンデンRCや、静修高校陸上部の外部コーチとして若い世代への指導に力を入れている一方、札幌エクセルACアカデミーの講師や、札幌エクセルホテル東急等でのランニング教室を定例で開催し、市民ランナーへの指導も行っている。

 

■札幌エクセルアスリートクラブ公式サイト
http://sapporoexac.com/  (ランニング教室参加者募集中!)
公式ブログhttp://blog.livedoor.jp/sapporoexac/